Robert Wyatt「Rock Bottom」(1974)→
曲目はこちらロバート・ワイアットが耳障りのいい曲を作ろうとするとこうなるのだろうか…普遍的な感動を与えてくれるアルバムは数あれど、このアルバムほど安易な感傷を避けようと試みながら、その普遍的な感動の境地へたどり着いたアルバムは数少ないのではないでしょうか…。
ソフトマシーンを脱退したロバート・ワイアットは、1971年に
「The end of an ear」をリリース。これがまたなんとも凄いアルバムですが…。ソロとしてはこのアルバムが二枚目となります。ロバート・ワイアットは、
ソフトマシーン時代にドラマーとして活躍しながら、脱退後に建物から落ちた事故が原因で、下半身不随となってしまいます。下半身不随ではドラムを叩くことはままならず、ミュージシャン生命を絶たれる危機に陥りますが、彼は鍵盤と自身の歌声でもって現場に戻ることを決意。そうした経緯にまつわる複雑な感情が入り乱れた、唯一無比の実に不思議なアルバムになっています。プロデュースは、
ピンク・フロイドのドラマー、
ニック・メイスン。
個人的にはポップ史上究極の名曲
「Sea song」で幕を開けるのですが、コンガのような音での貧弱なリズム、調和にとらわれない粗野で偏屈なピアノ、そしてつぶやくようなか細い歌…まるで万人を感動させる記号を一つも持っていないのに、なぜこれほど聴く人の気持ちを昇華させてしまうのか…どこまでもジメジメした質感なのに、目頭すら熱くさせるほどの説得力…
A面最後での
「Little red riding food hit the road」でトランス効果のように襲い掛かるクラリネットやサックスの応酬、シンバル逆回転の嵐…そしてB面の
「Alife」でワ突然のイアットの不気味な笑いで、湿った静寂とトランス劇の応酬の幕が閉じます。
曲の要素だけ取り上げていけば、聴き所を掴むのがとても難しいように思われるのですが、一聴するとそうしたゴタクはどうでもよくなりますね…全編を通した冷たさがなぜ聴き手の心を抉り取るのか…これは未だに僕の中では謎でございます…
う〜ん、やはり必聴の予感…100枚どころか、10枚と言われればこれを迷わず選べるかもしれない…未聴の人は是非…



UK盤。マトは2U/1U。CD化した際にジャケットのデザインが変更されているようで、カラーになっています。

こちらは
Tears for Fearsによる「Sea song」のカバーが収録された12インチシングル。「I Believe」のB面。こちらもかなりの秀作です。
「ルール・ザ・ワールド」で終わるはずもなかった、底知れぬ能力が感じられます。
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